目覚めてゆく風景
Finn Godwin
2025年6月14日(土) ー 6月29日(日)
月火水 休
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MJK Galleryでは、Finn Godwin(フィン・ゴッドウィン)による日本初の個展を開催いたします。
「芸術とは自然の再現ではなく、自然の本質である」
——ポール・セザンヌ
まだアムステルダムの街が目覚めきらぬ時間、フィン・ゴドウィンは静寂のなかに身を置く。早朝の運河沿いや湖畔、小道に差し込むかすかな光。その曖昧な輪郭のなかで、彼は画板を手に、日常にひそむ繊細な変化と移ろいに静かに呼応する。
光に濡れた野花、揺れる木陰、水面のきらめき——それらは壮大な風景ではなく、目を凝らさなければすぐに消えてしまうような、かすかな存在の気配だ。
フィン・ゴドウィンの制作は、観察であると同時に「在ること」への選択であり、絵画という行為そのものが、世界にそっと触れるための方法論となっている。写実を装ったその画面には、単なる描写を超えた感受性が宿り、そこにあるのは誰かにとっての記憶かもしれないし、まだ名付けられていない風景の断片かもしれない。
彼の絵画は、片山牧羊の《芒原》や《野中の秋》といった作品群に通じる、抑制された色調と余白の構成を想起させる。あらかじめ演出された視覚的ドラマではなく、静けさや遅さに寄り添う構図。その絵肌には、日本的な「少なさの美学」——侘び、寂び、そしてもののあはれ——が仄かに滲む。
たとえば、朝がまだ光として確定しないその境界、街と自然の接続面に漂う、視覚の不確かさ。そこにこそ、彼の眼差しは引き寄せられていく。
「朝の都市は、わたしの庭である」。
この静かな宣言は、個人的な世界の再編であると同時に、私たちの視覚の再教育でもある。
フィン・ゴドウィンの作品において、都市は単なる場所ではなく、静謐な時間と感情が呼吸する場へと変容する。それは過剰に語られることのない風景へのまなざしであり、世界との和解を願う、現代におけるひとつの祈りのかたちである。
CV
Finn Godwin(フィン・ゴッドウィン)
イギリス生まれ、アムステルダム(オランダ)在住
学歴
2017年|ヘリット・リートフェルト・アカデミー(アムステルダム)ファインアート学科 卒業
主な展覧会
2025年|Darling Killers(グループ展、Dead Darlings Collective、アムステルダム)
2024年|Daily Life(グループ展、Swab Art Fair、バルセロナ)
AND NOW THIS(グループ展、Dead Darlings Collective、アムステルダム)
2023年|Watching the World Go By / Se verden passere fordi(リネア・ラングフィヨルドとの二人展、コペンハーゲン)
All Strings No Regrets(グループ展、Dead Darlings Collective、アムステルダム)
Art Macao(マカオ国際芸術ビエンナーレ)(グループ展、マカオ芸術博物館)
2022年|The Garden Suite(個展、CHAxARTXAMS、アムステルダム)
Issues!(グループ展、Dead Darlings Collective、アムステルダム)
2021年|Green Fingers(個展、CHAxARTXAMS、アムステルダム)
2017年|ヘリット・リートフェルト・アカデミー賞 ノミネート
The Graduation Pictures(グループ展、ヘリット・リートフェルト・アカデミー、アムステルダム)
