透明な部屋:つかみ取れない遠い今
長谷川博子 / 王家明
止めるには触る必要がある
生活に押し流される生活
閉じられた部屋で色は意味を知る
たゆたう部屋の輪郭を見た
学生時代はテキスタイルを専攻し、ファブリック素材で表現をしてきた長谷川は、日常で見つけた引っかかりを出発点に、自身の関心から紐解かれる世界を絵画として表現しています。『世界のすっとぼけているところを見つめたい』という長谷川の視点は、わたしたちが暮らしている雑多な波に押し流されそうな生活の中の一幕を丁寧に掬い取っています。作家の視点で紡がれる日常の風景は、貴重な作業を経て画面上に曖昧に導かれているといえるでしょう。
部屋をテーマに、ロスコ的な絵画作品を展開している王は、感覚的な解釈を画面上に持ち込み、存在しないものや、あやふやなものを絵画上で追求しています。現代社会の不透明な人間のつながりを模索するように、曖昧な尺度で画面に登場する色やかたちは、時として哀愁や複雑な感情を喚起させるようです。モチーフとして描かれているのは、日常風景の中に潜む人々の顔、表情、体、態度。絵画の言葉を饒舌につかいながら、抽象的な人々の営みを描写しています。
この機会に二人の絵画の世界をぜひご覧ください。
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長谷川博子/Hiroko Hasegawa
1993 三重県生まれ
2018 東京藝術大学 美術学部 工芸科 卒業 2021 東京藝術大学大学院 美術研究科 工芸専攻 染織分野 修了
個展
2023「Hiroko Hasegawa exhibition」Gallery Blue 3143/東京
グループ展
2015 「日々のエトセトラ」ギャラリー汐花/東京 2017「MEI-TEN」池袋パルコミュージアム/東京 2018「KIRE-KIRE-TEN」池袋パルコミュージアム/東京
2018 「つながる糸ひろがる布」京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA/京都 2019 「ショートバカンス」いりや画廊/東京
POP UP
2022 「Spiral Xmas Market 2022」スパイラルガーデン/東京
<ステイトメント>
朝の光はきれいで、草も木もぴかぴかに見える。
新鮮なお爺さんが歩いている。
さあ今だ!と思うときには、タイツがずり下がっていて、
火傷した口の天井が気になったりする。
フルーツのど飴を食べる。
やる気があるときはバリバリ食べてしまう。
グレープとモモが減って、次にレモン、
だいたい最後にオレンジが残る。一生これなのか。
小学生の頃、リンスで体を洗うとツルツルになるから一番いい!と思っていた。
毎日せっせとリンスで体をツルンツルンにしていた時期を思い出す。
数日離れるぐらいならスライムを伸ばしてやや色が薄くなる程度、
3ヶ月くらい会わないと伸ばした部分が ほそくなっていく。
もっともっとほそーくなって透明になる。
ドアを開けて入るとお好み焼きソースの香りがする暗い部屋。
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王家明/Jiaming Wang
1994 中国生まれ
2023.4 日本大学芸術学部大学院 造形芸術専攻修了
活動歴
2021.10 「日芸秋季企画展 」グループ展 新宿絵夢ギャラリー
2021.12 「第46回土日会展2021」 国立新美术馆
2022.9 「第57回神奈川県美術展」入選 神奈川県民ホールギャラリー
2022.10「Gallery美の舎 学生選抜展2022」 美の舎ギャラリー 優秀賞受賞
2022.11「Empty room 」& 「before nightfall」二人展
2022.12 「過去の欠片 」グループ展 熊谷守一美術館ギャラリー
2023.3 第46回 東京五美術大学連合卒業・修了制作展 国立新美術館
2023.7 世界絵画大賞展入選 東京都美術館
2023.8 個展 「Empty room」美の舎ギャラリー
2024.2 「再会の季節」グループ展 銀座画廊 美の起源
2022 三菱商事アート・ゲート・プログラム 奨学金生