Apocalypse: 創造と破壊の現在地
李燦辰
人類の時代と意味づけられ、それは「人新世」と名付けられた。人類が地球や生態系に影響を及ぼす時代となった時代を指す。産業革命以降、人類がもたらした森林破壊や気候変動の影響はあまりにも大きく、今日の資本主義は暴走をやめない。わたしたちは、混迷を極める資本主義を指向する現在を、人間中心主義的な論争とその行方を、どのように捉えたらよいのだろうか。
アーティストである李は、鋭い眼差しで今日の資本主義的現在地から自然と人間の関係を探っている。作品は抽象的なイメージと感情的な表現が組み合わさり、存在のはかなさや物質の消失といったテーマを現前化している。
破壊は創造の契機といわれる。これは根本的に自然の原理に通底する解釈だが、李の探究する絵画制作に見られるアプローチのひとつでもある。水性の絵の具の流動性と偶然性を利用して、イメージは脱構築され、分解し、やがて存在と消失の間の状態で現れる。このアプローチは、理性の支配に挑戦することで、精神的なものと感知的なものが相互に影響し合う、変化し続ける世界を明らかにしていく行為そのものである。
自己に潜りながら同時に、社会にまなざしを向けていく。イメージの飛躍は自然と人間と関係にとどまらず、精神世界における神のあり方にも及ぶ。現実の世界はちっぽけなもので、可能な限りそれを表現したいと語る李は、筆のストロークから身体の軌跡や、メディウムを生かした破壊の痕跡などを作品化している。自己や社会の精神性の理解を表現しようと試みている姿は、何かあたらしいヒントを生むような、これからの社会を示唆する黙示録的にも映る。
李燦辰
1995年中国生まれ、東京都在住のアーティスト
多摩美術大学大学院美術研究科修士課程修了(油画)
多摩美術大学大学院美術研究科博士後期課程在籍中
E x h i b i t i o n
2021 チャリティビエンナーレ 小品展
2022 『水と油展』グループ展
2022 個展「Modern fossil」
2022 東京五美交流展
2022「Experimental Exhibition」
2023 多摩美術大学学内展
2023 個展「彗星の魔術師」
2023 東京都国立新美術館 五美大連合展
2023 アジアのTAMABI グループ展
2023 ”HOCUS POCU S CIR CUS“グループ展
A w a r d s
2021 公募展 長亭GALLERY 入選
2021 公募展TURNERAWARD 未来賞
2022 公募展MONSTER Exhibition 入選2022
2022 公募展 第1 回 FEI PURO ART AWARD 入選
2022 公募展SHIBUYA AWARDS 2022 入選
2023 公募展「第2回 FEI PURO ART AWARD」求龍堂賞