chronicle:反復の地層

森川裕也 / 永山健吾

火をみつめた最初の時間

かつての
繰り返しの
足踏みの中で
重なり続ける
手触りを
紡ぎ出す/きびすを返す/記す
手触りから
答えのない現在地へ

本展は、今日の芸術から想起される、プリミティブな創造性を見つめ直す二人展。
「焼く」という人類が古代から繰り返してきた制作プロセスをもつ森川の陶。
大地から発せられる、起源としての芸術を模索する永山の絵画。
ベンヤミンは、芸術の起源を原始時代の宗教的価値に置き換え論じたが、火も大地も、かつてはもっと身近なものであったはずだ。
タイトルとなっている「chronicle」は、記す、記録する、という意味をもつ。それぞれの作品に積み重なる物質あるいは思考。古代からの歴史や、地層を想起させる。芸術の営みを更新していく、現在地はどこだろうか。

森川裕也の場合:
一度は粘土から離れ、工業製品を砕き、焼き、新たな作品として置き換えることで作品化している森川。すでに完成されたオブジェクトを解体し、新たに焼き直す作業は、完結したはずの物語に新しい物語を紡ぎ出すことと同義だ。その後粘土を用いてモチーフに内包された背景から新しいイメージを更新し重ねていく。森川は、解体しながら塑像するという背反するプロセスは、モチーフが持っている表層的な問題を扱うだけでなく「見えにくい特性」に無頓着であるという指摘をする。

永山健吾の場合:
永山の関心の多くを占めるのは、ラスコーの壁画やアルタミラ壁画に代表される、芸術の起源についてである。一般的に油絵を代表とする絵画は、壁にかけたり、イーゼルを使ったり、すなわち立てかけられて、制作されることが多い。永山の場合は、大地から始まるものの延長として、床にキャンバスを置き、さらに筆はあまり使わずに、手で描き、身体そのものの表現としてイメージが構築されている。永山の絵画制作のプロセスは、床で描き、壁にかけられる過程そのものが、原始時代に起こったであろう、大地から壁へと絵の「描かれる/置かれる」場所の変容を内包している。

【参加アーティスト】

森川 裕也
1993 三重県生まれ
2017 多摩美術大学大学院美術研究科工芸専攻 修了
〈個展〉
2019 「“Still eating” MORIKAWA YUUYA EXHIBITION 」plat.inc(東京)
   「森川裕也個展 “nonsense” 」いりや画廊(東京)
2018 「MORIKAWA YUUYA pottery exhibition」伊勢丹相模原店(神奈川)
2016 「景を眺める 森川裕也個展」いりや画廊(東京)
2014 「しるしをつける 森川裕也展」GALLERY ishi(東京)
〈グループ展〉
2023 「[セラミック・シナジー展]技術と表現。工芸と芸術。個と集団」松井利夫賞 /
京都市京セラ美術館(京都)
2022 「#ART GOES ON」SEASIDE STUDIO CASO(大阪)
   「いりや画廊企画 壁11㎡の彫刻展#06」いりや画廊(東京)
2021 「トッテのある形 part 3」gallery VOICE(岐阜)
2019 「多摩美術大学助手展 交差する視点」FEI ART MUSEUM(神奈川)
2017 「バリュープライス いりや画廊若手支援プロジェクトvo.7」いりや画廊(東京)
   「夏色-ナツイロ-」SQUARE gallery 湘南T-SITE(神奈川)
2016 「アジア現代陶芸展2016」臺北當代工藝設計分館(NTCRI)、台灣工藝設計館(台湾)
2015 「アートフォーラム三重-UPDATE-」三重県総合文化センター(三重)
   「-火仕事-多摩美術大学工芸学科卒業制作展」Spiral Garden(東京)
2014 「震災と表現 BOXART~共有するためのメタファー~展」グループワーク / リアス・アーク美術館(宮城)
〈POP UP〉
2023 「PLANETX NO YAMA」MENOSYAMA(東京)
2022 「PLANETX EXHIBIYION 未だ見ぬ惑星の大地へ」新宿マルイメン(東京)
   「TRIPLE NAME - nakaya plants × PLANETX × MORIKAWAYUUYA」なかや植物店
(神奈川)
2021 「POG Autumn Pop up at M+」the other shop in m+ museum(香港)
   「PLANETX Pop-up exhibition POG Big Cave」PLANTS OF GOD(香港)
2019 「Evolve the living sculpture」milieu space(インドネシア )
   「PLANETX exhibition “灯火” 」faro神楽坂(東京)
   「森川裕也植木鉢展」Forest Round Round(香港)
2018 「TRANSHIP × PLANETX 5th Seazon 森川裕也」TRANSHIP(東京)
〈公募展〉
2023 「第71回埼玉県美術展覧会」入選/埼玉県立近代美術館(埼玉)
   「2023・ZERO展」ZERO会賞 / 宝塚市立文化芸術センター(兵庫)
2019 「第3回瀬戸・藤四郎トリエンナーレ」入選 / 瀬戸市美術館(愛知)
〈コレクション〉
リアス・アーク美術館(グループワーク・寄贈)
〈その他〉
2022 「THE POT 現代植木鉢図鑑」作品掲載
2020 現代美術文化振興財団 陶芸家支援助成金 2期生
2016 園芸師・高橋弘氏の企画プロジェクト「PLANETX」に参加

永山 健吾 
1994 年 東京都生まれ
2019 年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻 入学
2023 年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業
2023 年 studio kelcova 所属

個展
2021 年 「Eyes Wide Shut』Gallery 美の舎/東京
展覧会
2019 年 「東京藝大在学生による朋芽展」 松坂屋上野/東京
2019 年 「Art Fair-Ongoing Matsuri」Art Center Ongoing /東京
2020 年 「Dear」 TOBARIER Gallery/東京
2020 年 「WASANBON」TURNER GALLERY/東京
2020 年 「Gallery 美の舎 学生選抜展 2020」 Gallery 美の舎/東京
2020 年 「Gallery 美の舎 WORKS! Vol.1」Gallery 美の舎/東京
2021 年 「東京藝大在学生による朋芽展」 松坂屋上野/東京
2022 年 「Non-title』 TURNER GALLERY/東京